『ウィーン・フィル コンサートマスターの楽屋から』を読みました


いや〜、なんというか上品な本でした。思わず外で営業と営業の間の空き時間に読むにあたって、普段の安いカフェではなく超上品な喫茶店 (in 駒込)に入ってケーキまで頼んじゃったよ(写真参照)。この本にぴったりだったから。

とにかく、めっちゃ、良い。今、ウチで熱心にプロモーションしているバルトロメイ・ビットマンのマティアス・バルトロメイのパパの本もそうだけど、ホントに素晴らしい。ウィーンの伝統を満喫できる素敵な一冊です。

この本を書かれた小宮正安さんのペンの力か、とにかく読みやすいのだわ。ウィーン・フィルのコンサート・マスター、ウェルナー・ヒンクが語り、それを小宮さんがまとめたんだけど、内容は各有名指揮者との裏話、仕事場での様子、そして室内楽(オーケストラでの活動と違って、こっちはすこぶるバンドっぽい)、自らの生い立ち、そして現在の活動やプライベートな話まで、それぞれ章に纏められ、固有名詞がまったく分からない私でもスイスイと読めてしまった。とにかく会話言葉で書かれているから、すっごく分りやすい。

バルトロメイ家の話が出て来るよと、某音楽雑誌の編集者さんが教えてくれたので興味を持って読んでみたのだけど、 出てきたのはパパではなく、イラストレータとしても成功したヴァイオリン奏者の叔父・バルトロメイ(エルンスト・バルトロ)さんの方。このヒンクさんとは相当仲良しだったらしく、子供が産まれるたびに叔父・バルトロメイはイラストをプレゼントしてくれたのだそうだ。ちなみに彼のイラストは、ここでもいくつか見ることができます。素敵!

クラシック・ファンには最初の指揮者裏話の章だけでも、超悶絶なんじゃないかな。レコーディングや映像撮りがこんな風に行なわれているのか、ってのも新鮮だったし、スポーツの話題でサッカーの試合をミラノ・スカラ座のチームとやったことなどもビックリ。(世界頂上対決!?)あ、あとクラシック音楽でも「踊り」を前提に演奏しなくてはならないって記述があって(すみません、正確になんて言ってたかは後から見つけられず)、そこもなんだか新鮮な話だと思った。クラシックとは、メトロノームと楽譜の世界だと思ってたから。なるほどねぇ…

それにしてもヒンク氏の謙虚な態度に感銘を受ける。コンサート・マスターとか言って、もっとギラギラしているような野心的な人かと思ったけど、うーん、こういうすごく謙虚で落ち着いていて、自分よりもグループ全体のことを考えて… そういう人がグループのリーダーになれるのねと妙に納得。いや、まぁ、まちろんヴァイオリン奏者として優れているとかあるのだろうし、きっと死ぬほどつらい練習もたくさんしたのだろうけれど、こういうお話を聞いていると、絶対にそれだけじゃないよな、と思う。一方で「自分は悪くない」「間違ったことはしていない」なんて言っちゃう人には誰もついてこないのだよ…と最近の相撲騒動を見て思ったり…(私も若いころそうだったから、分るのだけど…)

とにかく素敵な本です。クラシックに興味がない人でも一度読んでおいた方がいいよ。これがウィーンの伝統か、っていうね。他のオーケストラとは違う確固たるものが、やっぱりあるよね、ウィーンはね。こういう世界に生きている人たちなんだ、って。
  


参考リンク:THE MUSIC PLANT 日記: フランツ・バルトロメイ「この一瞬に価値がある」を読みました(1)

参考リンク:THE MUSIC PLANT 日記: フランツ・バルトロメイ「この一瞬に価値がある」を読みました。(2)

「そういう世界」からウチに来てくれたマティアスには本当に感謝。バルトロメイ家の期待の星?! マティアス・バルトロメイのデュオ、バルトロメイ・ビットマン初来日公演になります。詳細はこちらへ。